●倒産の減少
帝国データバンクの調べによりますと、2021年7月の倒産件数(490件、前年同月比42.1%減)は、2カ月連続で前年同月を下回り、7月としては2000年以降最少となっています。
理由は明白です。総じていえば、資金支援により’延命‘できているとみて間違いないでしょう。つまり、手元資金が何とか足りている状況ということです。
雇用維持に寄与する「雇用調整助成金」について、特例措置の期限延長を経て、20年3月から21年7月までの支給決定額は累計4兆円を超えています(雇用保険料の財源が底をつき、22年に保険料率引上げの検討が始まりました。中小企業経営者に取って増税に等しいようなもので頭の痛い問題になりそうです)。
そして実質無利子・無担保の特別融資(いわゆるゼロゼロ融資)をはじめ、借入金の返済条件の緩和対応、各種補助金・支援金などの資金繰り支援が目白押しの1年余でした。
●廃業が高水準、業種によっては増加
同じく帝国データバンクの別調査によると廃業が高水準、旅行業等一部業種では増加に転じています。旅行業はコロナの影響をもろに受けていますが、中小企業経営者の年齢が年々1歳上昇しているような中では、とくに小規模事業においては、廃業がより注目されるような状況になるのではないかと考えています。
●後継者の問題は単純ではない
親族が社内におらず役員にも適当な後継人材がいないという企業は少なくありません。トップを継承できる役員を育ててこなかったからともいえます。
他方、親族が社内にいて事実上の後継者として実務を仕切っている場合でも、その後継者が苦労している場合が多いです。顧問先の中の3社(エステ、アパレル、薬局)の例をみていてそう思います。
この3社、共通しているのは先代が事実上退き子息が後を継いでいます。先代は会長職のような立場でいます。子息の方々は先代より学が高く、経営管理能力は先代より高いです。
その一方で、構想力と営業力、そして決断力が弱いように感じています。
経営維持に困難を極める時代ですので一面的な評価は慎まないとなりませんが、数値能力が高いのにゼロリスクにとらわれ、将来を見越しての事業投資判断が遅れる傾向がみられます。コロナがいつあけるかわからない不透明な中では、じわじわと経営体力を弱めてしまいかねません。
●廃業支援予備軍の増加と廃業支援
例にあげた3社がすぐに廃業に向かうわけではありませんが、私の中の最悪のリスクシナリオとしては廃業予備軍になるかどうかの境目とみています。
最近、廃業支援のコンサルタントも少しずつ増えています。私の周りにもいます。(連帯保証している)借金があるからやめられないという悩みを持った経営者、従業員を路頭に迷わすわけにはいかないという悩みを持った経営者、取引先に迷惑をかけるからやめられないという悩みを持った経営者等を支援しています。
会社及び経営者の未来を奪うのでなく未来を与えるように支援するのが廃業支援の在り方と考えますが、そう考えた時に第三者承継がいわゆる出口戦略として注目されています。
一般のサラリーマン・OLさんで預貯金をためている方や事業を売却して手元資金を保有している方、あるいは士業等の専門家等が、ゼロスタート(まったく何もない状態から創業すること)よりも価値があるとしてイチスタートを行う動きが広がりつつあります。すでにある事業を買収して、取引先やノウハウ・技術を継承するものです。
廃業しようとしている会社を数百万円出して買収して経営している友人・知人が何人もいますから絵空事ではないです。
実際にはこうしたM&Aで出口をつくれる廃業予備軍の会社は5%くらいしかないと言われていますが当該会社にとっても日本経済全体にとっても有用な出口戦略の一つと言えます。